あのドクターの素顔 分野 呼吸器内科
2015年01月28日

鈴木榮一 先生

新潟大学医歯学総合病院

(平成26年11月20日インタビュー)

平成25年4月、新潟大学医歯学総合病院長に就任された鈴木榮一先生。
和やかな雰囲気の中、野球に熱中した青春時代など、普段なかなか聞けないプライベートなお話を伺うことができました!
鈴木先生の素顔に迫るインタビュー!

人の役に立てる仕事に就きたい!という想い‥小さい頃からの夢!

医師になられた理由やいきさつをお聞かせください

鈴木:何かきっかけがあったわけでも、親や親戚で医療関係者がいたというわけでもないのですが、なぜか小さい頃からずっと「医者になる!」と言っていたらしい。自分ではよく覚えていないのだけれど‥。

高校生になって大学受験を考えた時に、元々、理系の教科が好きだったので理学部にも興味がありましたが、人の役にたてる仕事に就きたい!という想いがあり、小さい頃からの夢でもあった医師を目指すべく医学部への進学を選びました。

人の役にたてる仕事はたくさんあるけれど一番シンプルなのが医師かなと思って‥。

研修医時代のお話をお聞かせいただけますでしょうか

鈴木:昭和54年に新潟大学を卒業後、内科医になろうとは思っていましたが、専門を決めかねていたこともあり、当時は大学病院で研修を開始する同級生が多い中、県立がんセンター新潟病院で2年間の内科研修を行いました。よく学び、よく遊び、よく飲んだ(笑)とても楽しい研修医時代でした。

呼吸器内科を選ばれた理由をお聞かせください

鈴木:研修修了間際になって、呼吸器内科と消化器内科のどちらに進もうかと悩みながら、最初の指導医であった呼吸器内科専門の栗田雄三先生のところに相談に伺ったところ、「お前は呼吸器内科だ」と即決していただき、その場で前年第二内科の教授に就任されていた荒川正昭先生に電話されてしまいました(笑)。

また「肺癌はがんセンターでやるから、お前はよくわからない『びまん性肺疾患』というのを専門にしろ」とも言われました。全く主体性のない専門の決め方ですが、荒川先生のもとで働くきっかけになったことも含め、今となってはとても感謝しています。

その後、昭和58年4月から聖路加国際病院病理科で研修を行う機会を与えていただき2年ちょっと過ごしました。

そこでの研修期間は、『びまん性肺疾患』の基本を学んだ貴重な期間であるとともに、全国の呼吸器内科の諸先輩や大勢の仲間と知り合いになれたことで、私にとってはその後の呼吸器内科医としての経歴に欠くことの出来ない期間となりました。

また、その間、実家に妻と生まれたばかりの長女を残しての単身赴任でしたが、わがままを許してくれた家族にはとても感謝しています。

研修医制度から大学病院の研修システム確立まで

鈴木先生は、研修医制度ができた当時から研修に携わり、新潟大学医歯学総合病院の研修システムを全て作られたと伺いました。
当時苦労されたことは?

鈴木:平成14年10月に総合診療部教授に就任し、平成15年4月には、平成16年度からの新医師臨床研修制度の開始を見据えた臨床研修センターの部長も兼任することになりました。

当初から大学病院での総合診療部の運営とともに、臨床研修センターの立ち上げと大学病院としての研修プログラムの構築、さらにその運営を期待されていたので、当初の研修必修科目に対応した責任者の先生方と意見交換、医学生からの希望聴取、各診療科との折衝、そして、協力型病院や地域医療研修に手を挙げてくれた施設との交渉等に当たりました。

この時のものが、現在の新潟大学臨床研修病院群研修プログラムの基本となっています。最初は、何から手をつけたら良いのかわからず苦労しました。

何かを始める時、人にお願いするにしてもまず、自分が勉強しなければいけない。そのノウハウを皆に伝えなければいけないから‥。

また、研修センターの事務の方と共に頻繁に県との話し合いを行いましたが、それまで行政組織の各部署との対応という経験はほとんどなく、非常に大変だったのを覚えています。

今では、県の方と比較的気軽に意見交換ができるようになり、良い関係になっていると思います。大学病院だけ、あるいは研修病院だけではなく、県も一丸となってやることで色々な事が出来るようになったのは大きいです。一から始めるのは確かに大変ではあるけれど、新しい事を始めるというのは面白かったですし、楽しかったですよ。

新潟県の医師不足は、極めて深刻な問題ですが、幸い県と大学病院を含む県内全ての基幹型臨床研修病院が一緒になって、良医育成新潟県コンソーシアムを組織として活動していることは、今後の新潟県にとって良いことだと思っています。

それでは、これからの課題は

鈴木:研修医を育てられる若い医師がもっと必要だと思う。研修センターの医師は皆、一生懸命やっているけれど、とにかく忙しい方ばかりなので、研修医より少し年上で、一緒になって色々な事が出来る若手の良き兄貴的な医師がどこの研修病院にもいてくれると、とても良いと思う。そういう人を育てたい。増やしたいと思う。

野球に青春をかけた日々!

野球をされていたと伺いましたが、その当時の思い出をお聞かせください

鈴木:中学、高校と野球部に入ってひたすら野球をしていました。やると一度決めたことは、夢中になって、トコトンやる性格なので。

でも、野球をやりながらきちんと勉強もしていました‥していたのだと思いますよ(笑)。以外と成績が良かったですし。

部活が終わるとクタクタになって家に帰り、夕飯をひたすら食べて、風呂に入ってバタンと寝る。そして夜中に起きて勉強をして、また朝まで少し寝るという生活でした。ラジオの深夜放送を聴きながら勉強していましたね。あとは、試験前は部活がないので、その期間集中して勉強して‥なんとか成績を保っていました。

野球部に入りながら現役で医学部に入るというのはすごいですね

鈴木:そんなことはないですよ。野球やラグビー等、ひたすらスポーツをやっていた仲間が何人か現役で医学部に合格していて‥。

お互いスポーツ馬鹿だと思っていたのに(笑)。

その年、それまで医学部定員が100名だったところ、120名に増えた。この増員した20名が大きかった、20名増員に救われたなぁ‥なんて皆で言っていました(笑)。

大学に入ってからもすぐに野球部に誘われましたが、はじめは部活に入らず、勉強に専念しよう!と思っていました。でも、ある時、高校の野球部の先輩から『早起き野球』のチームに誘われて‥本当は大学生が入ってはいけないのだけれど‥、結局そこで野球をしていました。楽しかったですよ。

毎日は行けませんでしたが、土、日や平日の早朝4時、5時に会場に行くこともありましたね。

朝は苦手なのだけれど、その時だけは不思議と起きることができて(笑)。それが終わると学校に行って授業を受ける、という生活でした。

私以外は全員社会人で年上の人ばかりでしたが、同級生とはまた違った交流が持てて、後々考えた時に良い経験だったなぁとつくづく思います。

どうしても今の学生って、特に医学部はその中でしか交流がなく、上の方達、他の分野の方達との交流がなかなか持てない。私はそういう意味ではとても貴重な良い経験が出来たと思います。

一番良かったのは、私以外全員社会人だったから、飲み会に行っても全部タダだったことだけれど(笑)。

ご家族との思い出‥可愛いお孫さん

お休みの日の過ごし方をお聞かせいただけますでしょうか

鈴木:今は何もしてない(笑)。

運動するのが好きなので、以前は第二内科で野球チームを作って試合をしたり、仕事が終わっが終わってから夜9時頃から仲間とテニスをしたり‥。妻や子供にテニスを教えたりすることもありました。サッカー観戦にも行きましたね。

でも、とにかく仕事が忙しかったので、そんなに時間はとれなかったけれど‥。

子供と過ごせる時間もあまりなかったなぁ‥。

朝ご飯だけでも一緒に!と言って必ず家族揃って食べていましたけれどね。

今は、野球に限らずスポーツ全般観戦するのが好きなので、新聞でテレビのスポーツ番組をひたすら追いかけて観ていることが多いかな。

お孫さんと公園にて

お子様との思い出は

鈴木:子供は私に面倒をみてもらったことがないと言っています(笑)。

相談ごとも母親にしていたみたい。

子供の世話をしたと言えば‥子供たち三人とも県外の大学に進学したのだけれど、受験の時は付き合いました。受験の下見に連れて行ったり、大学が決まった後の住まい探しに行ったりとか。

三人とも誰も医療関係には行かなかった。医療関係の仕事に就いたら家に帰ってこられないと思ったらしいですよ(笑)。

でも、年一回必ず毎年夏休みに家族旅行には行っていました。旅行計画を立てて、北海道、四国、九州など結構あちこち行きましたね。

年一回の罪滅ぼしというか(笑)。家族で旅行計画を立てるところから始めると楽しいじゃないですか。

お孫さんがいらっしゃると伺いましたが、やはり可愛いですよね

鈴木:可愛い!

孫は三人いて、長女の子が小2の男の子と年長の女の子。最近、次女が男の子を出産しました。たまに帰ってくると孫の相手はする(笑)。

長女は京都、次女は仙台に住んでいるのだけど、二人とも里帰り出産して家に戻る時には、車で送っていきましたよ。赤ちゃんを連れての公共機関は、なかなか大変だからね。

子供にはサービスできなかったのだけれど、孫のためなら頑張る(笑)。

ご家族と

目の前にあること、やるべきことを一生懸命やる!

医学生や研修医の皆さんにメッセージをお願いします

鈴木:私自身が今までそうやってきたということもあるのですが、『目の前にあること、やるべきことを一生懸命にやる!』ことが大事だと思っています。

勉強、部活など何事にも一生懸命取り組む!そして、友達との交流等も含めて色々な経験をした方が良い。

研修時代だったら目の前にいる患者さんのために何ができるか一生懸命考えて向き合う。そうやっていけば自然と力は付くと思います

どうしても最近の若い人達は、アレもコレもやらなければいけないと焦ることが多い。例えばテクニックを早く覚えなければ‥とか、資格を早く取らなければ‥とか。

でも、学生にしろ研修医にしろ、これから一生医師をやっていくわけだから、そんなことで早い遅いというのはあまり気にする必要はない。

まずは、目の前のこと、やるべきことを一生懸命やる。そうすればだんだん身についていくものだと思います。

でも、そうはいってもやはり早く技術を覚えたいと思うかもしれない。そこで半年で覚える人もいれば一年かかる人もいる。でも何十年も医師をやる上で、そんなことはたいした差ではない。

要は目の前の患者さんにいかに一生懸命向き合えるかということが大事だと思います。あとは、患者さんはもちろんですが、まず自分の身体を大切にするということ。私もそうでしたが、どうしても若い頃は無茶してしまいがち。

でも、身体は基本ですし、医師は体力が必要。自分の体調管理をしっかり維持していかなければいけないと思います。

(所属等は執筆時現在です。)