先輩医師インタビュー 分野 総合診療科
2021年03月23日

体全体を診る・全人的に診る・地域全体を診るのが使命です。

新潟勤労者医療協会 下越病院 総合診療科酒泉裕 先生新潟県出身・平成25年 北海道大学医学部卒業

総合診療医を目指したのはなぜですか。

学生の頃は内科志望でしたが、初期研修を経て、特定の臓器ではなく全身を診たいと思うようになり、総合診療科がある病院を自分で調べて勉強に行きました。その後、2018年から新潟市民病院・総合診療内科で、2019年4月からは下越病院で総合診療科と一般内科の診療を担当しています。

あらゆる病気を診るのは大変ではありませんか?

幅広い経験ができるだけでなく、悩み続けた患者さんの助けになれますし、一人の患者さんについて幅広く深く長く関わることができるので、手ごたえを感じますし、日々おもしろいですよ。病気だけでなく、患者さんの気持ち、家族との関係、暮らしや仕事などを聞き取って診ていきます。また、末期がんや老衰など、治療ができない場合にも、医療に関わることすべてを診ます。患者さんはもちろん、ご家族ともじっくりと話し合うのでコミュニケーション力が必要です。

どのような患者さんが多いですか?

「何科に行けばいいかわからない」「原因がわからない」「多くの病気・症状があるのでまとめて診てほしい」という方が多いですね。たとえば、動悸の症状があっていろいろ検査をしたけれど悪いところが見つからないという30代の女性。表情の暗さが気にかかり、生活全般について聞いていくと、ずっと子どもと一緒でストレスを感じているとわかり、うつ状態を疑い治療を開始。同時に、ご家族に相談してみてとアドバイスをしたところ、回復に向かいましいた。また、原因不明の激烈な腹痛で入院した患者さん。お腹の病気なら内科、筋肉痛なら整形外科になりますが、最近わかってきた皮神経の損傷ではないかと推論して治療をしたところ、それが正解。幅広く新しい情報を得ておくことも大切です。

先生は研修医教育にも関わっていらっしゃいますね。

下越病院の研修医は、外来での研修のほか、教わるだけでは身につかないので、アウトプットのために研修医同士が発表しあう勉強会を行っています。当院は1979年から研修医の受け入れを行ってきた実績があり、現在では前期・後期研修を一貫してフォローする体制を構築。総合診療科では私が指導しますが、ここでの経験はどこに進んでも基本になるのでおススメです(笑)。

これからの目標を教えてください。

やりたくてまだできていないことは、病院に来ない人、健康診断を受けていない人をなくすことと、そのサポートです。地域に目を向けると、病院外で困っている人は少なくありません。行政や地域包括センターなどと協力して、地域全体を元気にしたい。これも、総合診療科の大きな使命だと思っています。

最後に、学生たちへのメッセージをお願いします。

医師として、「マニュアル通り」や「上から言われたから」はなく、自分で考えて、自分で結論を出せるようになってほしいです。そこに近道はなく、患者さんの話を真摯に聞き、考えて検査をオーダーし、診療する――を積み重ねて成長していくもの。責任をもって自分の結論を出せるように頑張ってください。

(所属等は執筆時現在です。)