「故郷の地域医療を担う!」自治医科大マインドで新潟に貢献
済生会新潟県央基幹病院 研修医増山大輔 先生新潟県出身・令和7年 自治医科大学医学部 卒業
医療に恵まれないへき地等における医療の確保および向上と地域住民の福祉の増進を図るため、1972(昭和47)年に全国の都道府県が共同で設立した「自治医科大学」。都道府県ごとに入学者数が定められており、新潟県からは毎年2・3名が入学しています。今回はこの自治医科大学を2025(令和7)年3月に卒業され、4月から済生会新潟県央基幹病院(以下「県央基幹病院」)で臨床研修中の増山先生にお話を伺いました。ちょうど2025(令和7)年度に同大学卒業生を対象とした新潟県の「キャリア形成プログラム」が新しくなり、増山先生はその1期生。このプログラムに関するご感想も伺いました。
同じ意志を持つ仲間と過ごした6年間
―自治医科大学での6年間はいかがでしたか?


とても充実した6年間で、自治医科大学に行って良かったと心から思っています。まず、全国各地から「故郷の地域医療を担う」という同じ想いを持った仲間が集い、全員が寮生活をする大学なので、一体感や学生同士の絆は他の大学よりも強いと思います。正直私は、初めからその想いを強く持って入学したわけではないのですが、6年間を通して学んだ「地域医療の担い手としてのマインド」、いわば「自治医科大マインド」が自分の理想とする医師像にマッチし、卒業後の医師としての在り方を想像することができました。自治医科大学では教養科目、各診療科での臨床実習や授業に加え、5年生の時には、自治医科大学卒の先輩方が働く地元病院での実習もあります。実際に先輩方の働く姿を見て、「将来は自分もこうやって働くんだ」と具体的にイメージすることができました。また、自治医科大学には「県人会」があり、1~6年生まで全員が出身都道府県ごとに親睦を深めます。この同郷の絆は、在学中はもちろん卒業後も心強い支えとなります。卒業後の指定勤務に関しては、これをネガティブに捉える方もいますが、私はむしろ自治医科大学卒業生の特権であるとポジティブに捉えています。へき地病院は地域医療の最前線であり、そこでの勤務を早い段階で経験できることは、その後の医師人生でも価値ある視点を得られるのではないかと思います。
新しいキャリア形成プログラムの魅力
―新潟県の新しいキャリア形成プログラムが2025(令和7)年度に始まり、増山先生はその1期生となりますが、これについてどのようにお感じですか?
以前のプログラムでは、新潟県の自治医科大学の卒業生は必ず、1年目は新潟大学医歯学総合病院(以下「新大病院」)、2・3年目は県立中央病院または県立新発田病院と決まっており、他の選択肢はありませんでしたが、新しいプログラムではこれ以外の病院を含めて学生が希望を出せるようになり、良かったと思います。私は希望した県央基幹病院で初期研修をさせていただいています。どの病院が良い悪いというわけではなく、それぞれの病院で初期研修には特色があり、自分で病院見学したり調べたりして希望したところで研修できるというのは大きなメリットだと思います。さらに3年目以降も卒業生側に選択肢が増えた印象があって、以前のプログラムとは異なり専門医取得や社会人大学院への進学にも配慮された内容になっています。また、後輩の学生たちは4・5年次からいろいろ気になる病院へ見学に行きながら希望する臨床研修先を選んでいると聞いています。授業や実習の合間を縫って栃木と新潟の行き来も大変ですが、魅力的な制度だと感じています。
新しい病院、県央基幹病院の研修医1期生として
―現在、県央基幹病院にて臨床研修中ですが、なぜこの病院を希望されたのですか?研修の様子はいかがですか?
県央基幹病院を希望したのは、県央地域医療の中核を担う病院として立ち上げた新しい病院であり、その研修医1期生になれるということが魅力的であったのと、総合診療と救急医療に力を入れた病院であるためです。開院したての病院に研修医として入るチャンスはなかなかありません。新しい病院ならではのシステム(電子媒体での同意書や病棟業務の電子化など)や新しい機材(エコーなど)で研修できたり、また時には病院の体制の不安定さや問題点を感じたりと貴重な経験をさせていただいています。今は5週間ごとに全ての診療科をまわり、指導医の先生に付いて患者さんを診ているのですが、特に救急科に関しては、緊急を要する業務の中、その日診た症例の振り返りのフィードバックなど研修医の私に対しても丁寧にご指導いただいています。元々、大学での学びから地域の病院・施設間の連携の重要さを知っているつもりではありましたが、県央地域の急性期を支える救急医療の現場に実際に立ち、その重要さを実感しています。
何のために勉強しているのか分からなくなったら…
―医師を目指す方へのメッセージをお願いします。

高校受験、大学受験、大学在学中の6年間、ずっと勉強の日々が続くと思います。「テストに追われる日々」と言い換えてもいいかもしれません。そんな日々が続くと、ふと「私は何のために勉強しているんだろう?テストのため?」と疑問に思い、自分を見失うことがあると思います。そんな時は、大学の先輩を頼るなどして、医療現場で働く先輩方の姿を見に行きましょう。私も自治医科大学卒の先生方の姿を見て、何度も我に返る・原点に返るきっかけをいただきました。「そうだ、自分はこのために、今勉強しているんだ。こんな風に働きたいんだ」と。私は研修医1年目ですが、患者さんとの関わりの中で「医師になって良かった」と思える瞬間がすでに何度もあります。「勉強してきて良かった。勉強してきたことが、今ここで活きている」という実感が湧いています。もう少し先の話かもしれませんが、このような実感が湧く日が必ず来ますので、頑張ってください。応援しています。
(所属等は執筆時現在です。)