医学生インタビュー 分野
2024年02月05日

地域枠での経験と学びを活かし、医学生で起業

新潟大学医学部医学科4年直井 香澄 さん新潟県出身・新潟県地域枠

医師をめざしたのはなぜですか。

4、5歳のころからです。医師の父が働いている姿を見たり、鮮明な記憶はないのですが、学会に連れて行ってもらって発表する様子を見たりして、子どもながらに「医師になろう」と思うようになっていました。 これから病棟実習が始まりますが、将来的には総合診療に進みたいと思っています。医師が不足している新潟県では、専門医ももちろん必要ですが、患者さんの身近にいて、心身を総合的に診られる総合診療医が求められているのではないかと考えているからです。

新潟県地域枠で入学したのはなぜですか。

高校の進学説明会で新潟大学医学部に推薦入試の地域枠があると知り、受験することにしました。地域の役に立てる仕事がしたかったので、9年間、新潟県の指定病院で働くことは私には何でもないこと。むしろ、患者さん一人一人に向き合って、病気ではなく人を診る、包括的医療が経験できるのは大いにプラスだと思っています。たとえば、地域枠の学生対象の夏季実習や県庁でのインターンを通して、新潟県の医療の「今」を体感できるのですが、とても貴重な経験だと思います。また、新潟県には医療についての学びのチャンスも多く、刺激的です。

学びのチャンスとは?

医師不足という課題解決に向けて、新潟県では大きなイノベーションが始まっています。ひとつは、医療従事者や企業・行政が集まって、新潟県の医療データを活用しながら課題解決力を身につける「にいがたヘルスケアアカデミー」です。私は1年から2年にかけてアカデミーの10講座に参加したことで視野がぐっと広がりました。もう一つは、臨床研修医が対象の「イノベーター育成臨床研修コース(イノベ枠)」です。この制度の立ち上げにかかわった部長といろいろ話をする機会があり、システムの作り方や事業の観点を学び、刺激を受けました。もともと経営に興味はあったのですが、ビジネスへの興味が濃厚になり、23年に起業したんです。

どのような事業をしているのですか。

医療や介護のためのアプリ開発と販売がメインです。一人の医師や介護者ができることは限界がありますが、そこに何らかのシステムがあれば効果の波及は大きくなり、医療の課題解決が進むはず。ボランティアではなく事業を興したのは、システムの開発やサービスの提供には、一過性ではない持続的なサポートが必要だからです。薄利でいいので(笑)利用者のために長く続く会社にしたいと思っています。イノベ枠での学びや人脈づくりは事業のためにきっと役に立つだろうから、ぜひ受講したいです。海外での経験や医師以外の資格も持つ講師陣に話が聞けるなんてなかなかないチャンスですから。

今後の目標を教えてください。

今、医学部内で、USMLE(米国医師資格)取得のための勉強会、包括ケアの症例の勉強会、スチューデント・ドクターとして活動するための勉強会の3つを立ち上げたところです。原点にあるのは、人の役に立ちたいという思いと知らなかったことを学べる楽しみです。分単位でスケジュールを組み、したいことは全部かなえていこう!の精神で頑張っています。 卒業後は、まず9年間で医師としての技術を磨き、最大限の力を発揮していきたいと思っています。生まれ育った新潟で活躍したいですし、地域枠を活用させてもらった「恩」を地域に返したいですから。同時に、事業面では、新潟県の包括的な医療を支えるシステムを構築していきたいと考えています。

医師を目指す方へメッセージをいただけますか。

地域枠で入学・卒業すると、地域に縛られるのではないかと思う人もいるかもしれませんが、私は今までそう感じたことはありません。反対に、地域医療の実態を学べる夏季実習や行政との接点が起業を後押してくれたり、中高生の進路相談会に招かれることはモチベーションアップになるなど、いいことばかり。修学資金のサポートもありがたいです。地域枠だから気づけること、できることがきっとあります。チャンスを活用しない手はありません!

(所属等は執筆時現在です。)