先輩医師インタビュー 分野 内分泌代謝内科
2018年11月20日

広い視野から病気を持った「人」を支える医師が目標

燕労災病院北澤勝 先生新潟県新潟市出身・平成20年 新潟大学医学部卒業

現在のお仕事について教えてください。

週3日は燕労災病院で内分泌内科の外来を担当し、週2日は新潟大学医歯学総合研究科で研究しています。テーマは生活習慣病です。ビッグデータを用いた臨床研究、生活習慣病のコホート立ち上げ、薬剤の臨床研究などを行っていますが、同時に、1型糖尿病の患者をサポートする目的で立ち上げた「新潟県1型糖尿病患者会千笑朱鷺の会」の運営も。正直なところ、こちらのほうに力が入っているかもしれません。

1型糖尿病がご専門ですか。

そもそも糖尿病の家族歴が濃厚な家系なので、学生時代から生活習慣病に興味を持っていました。糖尿病診療に関わっている中で現在の仕事内容にたどり着くまでに、3つの転機がありました。最初の転機は、小児科での研修中、指導医に誘われて「小児糖尿病キャンプ」への参加でした。遺伝的な因子や環境因子などから発症する1型糖尿病は、小児期にも多く発症し、その頻度は10万人に1人程度。その子どもたちの健やかな発育のために、患者と保護者を支援する会が全国で開催されており、その新潟版だったのですが、参加して「はっ」としました。そこでは、病気を持つ人たちが楽しそうに、普通の生活を満喫していたのです。患者さんは、生活者なのだと気づきました。それから「なんともない人がなんともないままで生活できるような補助をしたい」というスタンスを持つようになりました。

転機はあと2つあるのですね。

2つ目は長岡中央綜合病院で、長岡を中心に新潟県の糖尿病診療を支えていた八幡和明先生との出会いです。病院内だけではなく様々な勉強の場に連れ出していただき、幅広い経験をさせていただきました。医師や看護師、薬剤師から研修医まで医療従事者を対象にしたセミナーでは、その講演会やパネルディカッションが勉強になるだけでなく、そういう会を開催し続けるエネルギーに衝撃を受けました。人生の師匠、と勝手に思っています。「日常生活を送る糖尿病を持つ人に、いかに寄り添っていくか」をもっと突きつめ、さらに広く展開したいと思うようになりました。

そして、第3の転機ですね。

八幡先生のようになるために、「今、自分で出来ること」を考えました。自分に足りない物は多くありますが、その最たる物は以前取り組み、そして頓挫した医学研究を通した経験ではないか、と気づきました。当時着任されたばかりの曽根教授に御指導をいただいたのですが、当時は私には縁遠いように感じられその意義を見いだせずにいました。しかし、八幡先生らの御指導を受ける中で、かつては理解出来なかった医学研究に取り組む意義が、ストンと腑に落ちてきたのです。そこで、患者さんを目の前にした診療から一度距離を置き、大学院へ入学し改めて曽根教授に御指導をいただくことを決意しました。これが第3の転機です。大学院でのテーマは糖尿病合併症の発症予防についての臨床研究。この医学研究をやり遂げることで視野が広がり、また、次の一歩が踏み出せると思っています。

その次の一歩とはどのようなものですか。

たとえば「千笑朱鷺の会」での患者さんのサポートです。これは、成人1型糖尿病の患者会。小児1型糖尿病の患者会は「ペガサスの会」を含めいろいろあるのですが、こちらはその大人バージョン。患者と医師が交流し、生活を支えていこうというものです。全県を対象として交流会を行っています。毎年夏の新潟小児糖尿病キャンプを始め、各種講演会、一泊二日の勉強会(飲み会?)などを行っています。今後は他県の患者会との交流も始めようと思っています。

糖尿病治療の目的は将来の合併症を予防して、健康な方と変わらない生活を全うできるようにすることです。合併症の予防の研究、そして糖尿病を持った患者さんの生活をサポートする活動など、広い視野を持ちながら日々、医師として活動をしています。これからも様々な立場で『人』を支える地域医療に貢献していきたいと思っています。

(所属等は執筆時現在です。)