先輩医師インタビュー 分野 放射線科
2021年03月09日

幅広く診療科にまたがる知識・経験をもとに診療に貢献し続けたい

新潟大学医歯学総合病院 放射線診断科 助教佐藤卓 先生新潟県出身・平成18年 新潟大学医学部卒業

放射線診断を専門にされたのはなぜですか。

せっかく体全体について学んだのに、ひとつの分野に絞るのはもったいないと思ったのが原点ですね。放射線科は、患者さんの年齢、病気やけがの部位に関わらず、すべての臓器が見られて、身に付けた知識を全部使えるなと。また、大学の6年間を通して放射線科の先生にお話を聞く中で取り組んでみようと気持ちが定まりました。

今は、CT、MRIの画像診断を中心に、核医学検査・治療をはじめ、胎児MRI、心臓CTなど幅広く担当しています。

核医学専門医の資格をお持ちなんですね。核医学検査について教えてください。

CTやMRIでは形の異常を調べるのに対し、核医学検査では、放射性医薬品を投与して画像化することによって機能や代謝を調べます。特にFDG-PET検査では、他の画像では全然分からない病変が見えてきたりして、手術や放射線治療なのか、化学療法なのかという治療方針を大きく変えてしまうような情報をもたらしてくれることがあります。今は、FDG-PET検査が主流ですが、投与する医薬品の開発は進んでいて、認知症の評価のためのアミロイドPET検査薬もその一つです。現時点では保険適用外ですが、将来的に治療薬が開発されれば検査も保険対象となるでしょうから、検査適応は広がっていくでしょう。ですが、今は核医学を専門にする医師が少なく、後輩を育てていかなければならないと思っています。

放射線治療もなさるんですか。

手術・化学療法と並ぶ悪性腫瘍治療の3本柱である放射線治療、強いエネルギーの放射線をコントロールして体の外から治療する外照射は放射線治療科が行います。診断医の中でも核医学に関わる内用療法という、放射線医薬品の性質で体の中から治療するものには診断医も関わることがあります。がんのところにだけ作用して副作用の少ない薬が、世界中で研究・開発されています。また、放射線診断科で行う治療として、画像下治療、IVRがあります。主にX線透視装置を使ってカテーテルを血管内に挿入し、血管の内腔状態を観察、その後にステントやバルーンを用いて動脈や静脈の狭窄を治療したり、外傷による出血や喀血などの止血をしたりします。いずれの場合でも、血管撮影の準備段階でのCT画像の確認などを含め、どこに問題があるかを正確に突き止めなければならないので、診断医の目が必要とされます。

核医学検査のほかにも新しい動きはありますか。

CT、3T-MRI、PET-CTなど、機器の技術進歩は著しいですが、当院ではX線管球を2つ搭載するDual Source CTが導入され、高速撮影が可能になりました。心拍動のわずかな静止の瞬間も撮影できるので、特に心臓や血管など循環器領域で威力を発揮しています。ですが、高性能な機器があるだけで診断ができるわけではありません。診断医の経験だけではなく、撮影する技師の経験や技術、各診療科との連携があって初めて、質の高い画像診断ができるのだと思っています。

最近、画像診断はAIにとってかわられるのでは、と学生に聞かれたことがありました。AIが得意なのは単純作業です。年々増えていく多量の画像検査から単純な異常を検出するのは得意分野ですし、そこは人力では及ぶものではありません。しかし、病変を見つけた後の判断という段階で、ごく単純なものを除いて、AIでは正確な評価ができません。その判断にはやはり放射線診断医の力が必要となります。AI単独や放射線科単独よりAI+放射線診断医で成績が向上します。AIには単純作業をどんどんやって我々の負担を軽減してほしい。AIは我々の仕事を奪うものではなく、今後の診断医のパートナーとなる存在なのです。

最後に、学生たちへのメッセージをお願いします。

診断医の仕事は、技術進歩に伴って画像量は増えていますし、疾病概念の変化に伴って診断基準も変わるので、知識のアップデートが欠かせず、忙しい毎日です。が、病院によっても異なると思いますが、平日の忙殺されるような忙しさとは打って変わって、月2-3回前後の拘束番や緊急のIVRがなければ、夜間・休日対応の頻度は少なく、放射線診断科ではメリハリのある働き方ができます。

画像技術の進歩に伴い、現在の診療では画像診断というものが欠かせないものとなってきています。幅広く診療科にまたがる知識や経験をもとに診療に貢献するやりがいのある科ですよ。

(所属等は執筆時現在です。)