先輩医師インタビュー

ふるさとに貢献し、ふるさとで暮らす喜びを感じる、医師の仕事

新潟県立十日町病院 整形外科医長木下瑛二 先生新潟県出身・平成30年 自治医科大学医学部 卒業

2026年02月24日

分野 整形外科

自治医科大学は、「医療に恵まれないへき地等における医療の確保および向上と地域住民の福祉の増進を図る」という目的のもと、全国の都道府県が共同で設立した大学です。そのため、在学中から地域医療の担い手となる将来を見据えた実践的な学びが得られ、卒業後は出身都道府県内での勤務(9年間の指定勤務)が用意されているなど、他の医学部にはない特徴が多くあります。

一方で、この指定勤務期間にはへき地での勤務も含まれるため、専門医資格の取得が難しいといわれてきました。そんな中、指定勤務期間中に整形外科専門医資格を取得された木下瑛二先生に、専門医取得までの歩みと、ふるさと新潟で地域医療に携わる現在の思いを伺いました。

整形外科は、内科・外科両方のアプローチができる魅力的な診療科

―なぜ自治医科大学に、なぜ整形外科医になろうと思われたのですか?

自治医科大学を選んだのは、学費など経済的な負担を考慮したこと、そして「地元に戻って地域医療に貢献できる」という建学の精神に共鳴したからです。全国から集まった学生たちの地元愛や地域医療への意識の高さ、そして先生方の将来を見据えた実践的な指導が印象的で、とても充実した6年間を過ごしました。

整形外科を選んだ理由は2つあります。1つは、「腰が痛い」「手がしびれる」「けがをした」というような、誰もが経験する身近な身体の悩みやトラブルに向き合いたいと思ったこと。もう1つは、整形外科は投薬やリハビリといった内科的治療を行いつつ、必要に応じて自分がメスを持って外科的治療も行える、いわば“二刀流”の診療科である点に魅力を感じたことです。その点で患者さんと長くお付き合いできるところも、整形外科ならではの魅力ですね。

「カリキュラム制」で取り組んだ専門医資格

―指定勤務内で整形外科専門医資格を取得されたとのことですが、どのように取り組まれたのですか?

指定勤務の関係上、専門研修の「プログラム制」に基づく指定病院での勤務が難しかった※ため、「カリキュラム制」での取得を目指しました。これは、指定勤務や出産・留学など、連続したプログラム研修が難しい場合に配慮した、自由度の高い研修制度です。

2018年度に新専門医制度が始まって以降、県内整形外科ではおそらく私が初めてこのカリキュラム制で専門医を取得したのではないかと思います。カリキュラム制では、受験に必要な条件を自ら把握し、症例を集め、必要書類やレポートを学会へ提出する手間がかかりますが、その分、柔軟なキャリア形成を可能にします。

なお、指定勤務期間においても、県立妙高病院で地域医療に従事しながら、上越市の県立中央病院で手術研鑽を積むなど、多様な症例を経験することができました。

【※新潟県注釈】
令和7年以降の卒業生については「新キャリア形成プログラム」が適用されるため、どの診療科を選択しても、原則プログラム制で専門医資格が取得できるようになっています。

医療従事者として貢献しつつ、ふるさとで暮らす喜び

―専門医取得に向けて奮闘されつつ、その間にご結婚もされ、お子さんも誕生されたと伺いました。プライベートの環境変化とともに、地域医療への思いや心境の変化はありましたか?

地域医療に携わるうえでのやりがいや姿勢は、今も変わりません。大切なのは、自分自身や家族もその地域に暮らし、地域の一員として生活することだと感じています。実際に住んでみると、地域の人々の生活のリズムや背景がよく見えてきます。

たとえば今住んでいる十日町では、春の田植えや夏の畑仕事、秋の稲刈りといった農作業の季節行事があります。農家の方が入院された際には、「稲刈りに間に合うように退院したい」と希望されることも多く、治療計画にもその地域性が反映されます。冬には除雪作業やスキー、スノーボードによる外傷が増えますし、大雪で通院自体が困難になることもあります。そうした地域の事情を理解したうえで、住民が求める医療を提供することが、地域医療の要だと思います。

地域医療は、ヒトやモノといった資源が限られることもありますが、そのなかで工夫し、対応力を磨く経験が、医師としての引き出しを増やしてくれます。指定勤務は、医師としての土台を築ける、やりがいと成長の場だと心から思っています。特に、自治医科大卒だからこそさまざまな環境で経験を積めるということは、とても幸運で恵まれたことだと感じます。

医師は特別な職業じゃない。怖がらずにチャレンジを!

―医師を目指す方へのメッセージをお願いします。

現役高校生の皆さんと「医師という職業」についてお話しする機会がありますが、その中で多いのが「結婚や出産などのライフイベントと仕事の両立が難しいのでは」という不安の声です。

しかし、医師であっても、他の職業と同じようにプライベートを楽しみ、それぞれの人生を歩んでいます。現に私も指定勤務中に、同じ病院で地域枠として勤務していた妻と結婚し、子どもも生まれ、家族とともに楽しい毎日を過ごしています。医師といっても色々な診療科、働き方がありますし、ライフイベントを理由に医師への道を諦める必要はありません。

皆さんも、新潟で一緒に医師として働いてみませんか。私は新潟で待っています。

(所属等は執筆時現在です。)