新潟女性医師ネット座談会 分野 その他
2015年10月26日

産婦人科・女性医師との座談会

新潟県女性医師ネット

近年、少しずつ女性医師も増えてきて、あちらこちらで子育てや女性医師支援活動も行われるようになってまいりました。そこで、新潟県女性医師ネットでも、女性医師の先生方にお集まりいただき具体的な意見や、提案、女性医師ならではの悩み、仕事のやりがいなどをテーマを決めずに座談会形式でお話を伺いました。今回は沢山ある診療科の中でも女性医師が多く活躍している産婦人科の女性医師の皆様と、榎本隆之教授をお招きいたしました。また、男性医師の意見も取り入れたいと思い、呼吸器内科の影向晃先生にもご参加いただきました。

(平成27年10月26日開催)

メンバー

新潟大学 医学部     産婦人科学教室    榎本 隆 之 教授
新潟大学医歯学総合病院 産婦人科      高橋 麻紀子 先生
新潟大学医歯学総合病院 産婦人科     工藤 梨 沙 先生
あがの市民病院         産婦人科     市川 香 也 先生   
魚沼基幹病院          産婦人科     甲田 有嘉子 先生
新潟県新発田病院   呼吸器内科        影向  晃  先生
新潟県医師・看護職員確保対策課   参事  神田 健 史 先生

コーディネーター

新潟県女性医師ネット 代表世話人 佐々木綾子先生
(新潟県福祉保健部参事(女性医師支援担当) 村上地域振興局長 村上保健所長)

☆まずは自己紹介から☆

佐々木:おはようございます。私は昭和54年卒で、産婦人科に入局しました。同級生120人のうち、女性は7人です。6年間の研修期間の後17年間厚生連村上総合病院に勤務していました。現在は保健所長の仕事をしていて、14年目になります。臨床を離れるのは寂しかったのですが、行政に入って、医師確保対策や、女性医師ネット、危機管理などやりがいのある仕事をやらせていただいてよかったと思っています。

甲田:魚沼基幹病院で産婦人科をしています甲田有嘉子です。私は高校まで東京で過ごし、大学から新潟に来ました。平成18年卒です。今5才と2才の子供がいます。産休は半年くらいでその後はフルタイムで復帰しているのですけれども、まわりの皆様に支えていただいて、自分の出来る範囲で仕事をさせていただいて非常に恵まれているなと思っています。今、魚沼に来て4ヶ月ほど経ちますけれども、フォローしていただきながら、お産も、手術も入らせていただいております。主人も同じ病院で働いているので、融通がきくのも大変助かります。

高橋:高橋真紀子です。沖縄県出身で、大学卒業まで沖縄で過ごしました。結婚を機に新潟に引っ越して、初期研修2年目で長男を出産しました。その後初期研修を終了後、産休を経て平成18年入局し、最初から育児をしつつ産婦人科医として働いてきました。累積3年半のフルタイム勤務後にパートタイム勤務になり、約2年半経ちました。現在は新潟大学でパートタイマーながら女性ヘルスケアという新しい仕事を任せていただきまして、非常にやりがいのある毎日を過ごしています。よろしくお願いします。

高橋 麻紀子 先生 佐々木 綾子 先生

影向:県立新発田病院の呼吸器内科の影向晃と申します。妻も医師で、3人の子供がいます。3回の産休、復帰をそばで見ながら、医師として勤務して参りました。当時はまだ手探り状態で、苦労したことも多々ありました。今後はもっと復帰しやすい病院が増えてくると良いなぁと思っております。今日はいろいろご意見を伺えたらと思っております。よろしくお願いします。

市川:私は平成15年に卒業しました。ストレートで研修する最後の学年でしたので、2年間の研修をせずに入局しました。今は小学校3年生と年中さんの子供がいます。当時の教授の意向で、サポートをするから、中途半端に働くのではなく、フルタイムで復帰して働きなさいと言われ、私もキャリアを重ねていきたいと思っておりましたので、フルタイムで復帰しました。実際、主人と離れないように配慮していただいたり、行く先々でサポートしていただいて。子供はいろんな所を連れ回してしまいましたが、自分なりに一生懸命頑張って、走ってきました。今日はよろしくお願いします。

工藤:大学産婦人科の工藤です。糸魚川出身です。卒業して8年になります。卒業して4年目に1人生まれて、6年目に2人目が生まれて。今は3才と1才です。私は自分が働きたかったので、折れてくれる人と結婚して、今、旦那は専業主夫になってもらってます。

榎本:今日で赴任してきて3年と2ヶ月になります。大阪出身の榎本です。新潟に来て、いろいろ見てきますと、大阪と新潟の違いを大きく感じるところがありますね。一番大きな違いは、やはり大阪は人口比で比較しても産婦人科医師が多いですね。大阪の女性産婦人科医は妊娠・出産のために職場を一時的に離れても、わりと早期に復帰して、分娩の現場に戻ってきていただいています。しかし新潟ではそれが出来ていない。その違いは何なのかということを考えていただきたいです。

神田:私は事務局側の人間ですが、医師で、妻も医師です。2週間前に4人目が生まれまして、妻はまだ産休中ですので、今朝も下から2人目の2才児を送ってからここに参りました。私もお話に参加させていただければと思います。

甲田 有嘉子 先生

☆それでは座談会スタートです☆

~親としてやるべきこと、医師として出来ること、女性として生きること~

佐々木:私が産婦人科に入局しようと思った理由は、実習で分娩を見て興味を持ったことがたきっかけですが、研修先の先生に「女がやる仕事じゃない、出来るわけないよ!」って言われて、じゃぁ、やってみようかなって(笑)。
最近は女性医師も増えてきて、医師だけではなく、女性が働くのが当たり前の世の中になってきましたよね?私は、これからの皆様にやりがいと生きがいを持って、尚且つ結婚も子供も持って、がんばって欲しいと思っています。その為には、働き方を見直す必要があると思うのですが、いかがでしょうか?

榎本:全国的にも新しく産婦人科医になる医師のうち女性の占める割合が増えてきています。新潟大学では私が赴任してから入局したのが14人。男性が4人で女性が10人。一方新潟県下の関連病院に勤務する産婦人科医のうち、あと5年で定年を迎える医師が12人、10年で定年を迎える医師が23人います。女性医師がなんらかの形で分娩の現場に復帰してくれなければ、新潟の産婦人科医療は崩壊します。今何らかの手を打たなければ5年から10年のうちに新潟でお産ができる病院がほとんどなくなります。女性医師にとって出産も育児も重要です。けれどもお産の現場にもどるのをギブアップして欲しくない。大阪では産休をとっても割と早期に復帰してお産の現場に戻ってきていただいているのです。大阪で出来て、新潟で出来ないということはないので、どうやったら新潟でもお産の現場に女性医師が復帰していただけるかみんな考えて欲しいですね。

佐々木:5年後、10年後にお産を扱えるDr.を育てていくにはどうしたら良いかが課題ですね。それにはまず、出産後に復帰して働いてもらえる環境づくりが必要です。多様な働き方があってもいいと思いませんか?女性だけが子育てするのではなく、男性も含めた働き方の見直しが必要ではないでしょうか?

榎本 隆之 教授

高橋:でも、旦那に何か頼むのって、頼みにくくないですか?周りの人からはもっと旦那にやってもらったら?と言われのですが、すごく協力的な主人なので、なかなか言えないですね。主人の職場では休みが取りにくいのではないかとか、白い目で見られないかとか。

榎本:そんなに心配することないと思いますよ。育児は女性がすることと考えてる上司がいたら、考え方が古すぎますね。どちらも国民の税金を使って医師になっているのだから医師としては対等ですよね。産婦人科の医局として出来ることは、ご主人の勤務している病院の上司に働きかけてあげることですね。「子育ては奥さんにまかせっきりにしないで夫婦で協力してやってください。奥さんも医師として働けるように考えてあげてください。」と産婦人科の奥さんをもつ男性医師が所属する医局の医局長にはお願いしいてるんですけどね。

佐々木:それは夫である医師に対しての指導なり、教育なり?

榎本:そう。そうはゆうても、トップが変わってくれへんかったらあかん。

市川 香也 先生

市川:医者全体でっていうことが大切なのかなぁと思います。

佐々木:結局、上の先生達が女性医師に対して偏見があったり、医師は男性の仕事だとか思っているのよね。同じように勉強してきたのに、女性医師は子供生んだことによって、仕事はパートになって、収入も減って。夫婦関係が悪くなると思いませんか?

高橋:パートナーが医師であるかないかは大きいですよね。既婚男性医師の話ですが、「妻が医師以外だと家庭に入って夫を何とか立ててくれるけれど、女性医師だと家庭での役割も対等であることを求めるので、夫としては面白くない」という話を聞きます。男性はやはり、女性には家庭に入ってもらいたいものなのでしょうか?

市川:主人はそのタイプですね。はっきりとは言われませんが、主人の仕事があって、家のことがあって、余力があれば働いて欲しい。そう思ってると思います。でも、子供は誰かが育てなくてはいけないし、自分の子は自分しか育てられないと思うと、今はやはり子供に重きを置いて活動する時期なのかなとも思います。

甲田:小学校にあがるともっと大変になりませんか?

市川:そうなんです!上の子はもう小学3年生で大きいのですが、そうは言っても、誰かが宿題の丸付けをしなきゃいけないし、ご飯もつくって置いておけばいいってものでもないし。

工藤 梨沙 先生

佐々木:いろんな人が育児に関わることは、子供にとっても良いと思います。母親がいて、お父さんがいて、地域があって、シッターさんが何人かいて。母親だけが頑張らなくて良いのではないでしょうか。他の人に預けたり、助けを求める事に抵抗がありますか?

市川:抵抗ありません。ずっとそうやってきましたから。今は家政婦さんにきてもらっています。

佐々木:5年10年経てば子供たちは巣立っていきます。その時、自分はまだ40代、50代と仕事もプライベートもやるべきことがたくさんあるはずです。子供が大人になったときに、しっかり働いているお母さんたちがまぶしく見えるのではないでしょうか?その時が必ずくるから、女性医師には、いつも輝いていて欲しいと思います。今この時をどう乗り切るかって、意識を変えていった方がいいのではないでしょうか?男性医師は子供をもって、家庭をもって、働いているということが、とても幸せなことだと気づいていないのね。父親になって、妻がいて、子供がいて。夫としてのキャリアは、医師としても、研究者としても、マイナスではないはずです。ところが、日本の社会では子育てがきちんと評価されていないと思います。

神田:先生のおっしゃる、「女性医師には輝いていてほしい」って、なるほどなと思います。私の妻のことを考えると、育児を終えたときに、単なる“おばさん”になってもらっては困るなぁと。それこそいつまでも輝いていて欲しいと思います。

佐々木:あなた達、単なるおばさんになっちゃうわよ?(笑)

市川:そうなんです。すでになりかかってますよ。(笑)

市川 香也 先生 影向 晃 先生

☆みんなに知って欲しい。私たちの「こうなったらいいな」☆

~医師という仕事が好きだから復帰したい!~

佐々木:では、具体的にどうしたら働きやすくなる?

市川:24時間みてくれる保育園があったら、預けてバリバリ働きたい人もいれば、もっと子供との時間を大切にしたいから少しだけ預けたい人もいると思うんです。そんな風に選べたらいいですよね。

甲田:県内には24時間保育の所、あんまりないんですかね?

工藤:県内は3つの病院に24時間保育があって、当直できる体制になっています。

甲田:魚沼基幹病院も、月水金だけ24時間保育というか、夜間保育をやっています。

高橋:何歳まで預けられるのですか?

甲田:定員10名の小さな保育園なので主に2~3才までですが、希望によっては4,5才でも受け入れてくれます。夜間保育があるので当直も出来ます。

神田 健史 参事(右端)

佐々木:やっぱり産科となると当直なしでは出来ませんからね。夜中に緊急に呼び出されて、どうなるか分からないっていうのが、とてもやり甲斐があって面白いのよね!

高橋:緊急来た時、「あ、来た来た!」って感じで。緊張すると同時に気分が高揚します。

佐々木:そうそう。ガラッと変わる空気感。それをどう診断して、対応していくかに参加の面白みを感じるのよ。

市川:でも、今の現状だと、100働くか、全く働かないか0か100の決断を迫られがちな気がします。100を迫られても働けないのが現状なのですが。

榎本:新潟にとってみたら、0か100でなしに、10でも助けていただくほうが絶対いいです。それれくらいでも働ける人をリクルートするシステムみたいのあったらええと思うんですよね。戻れるかなって迷ってる人には、満足できる体制を作ってあげたいということなんですよねぇ。

市川:交代制勤務とかはどうなんですかね。看護師さんみたいに。

榎本:いい案だと思うよ。問題は病院が対応してくれるかどうかやね。

神田:先生、始めにおっしゃっていましたけど、10年たったら大変になるって。本当に何かを打てるタイミングは今しかないって。だったら試しに交代制勤務の病院を作ってみたらどうでしょう。そこでアピールして、働くことの出来る非常勤の先生が増えれば、少し集約化したとしても、体制は維持できるかもしれないですね。どこかで一つモデルとしてやってみるのもいいのではないですか?

榎本:それはいい考えですね。是非現実にしたいですよね。あと、子育てしながら専門医を取得することも目指して欲しいですよね。

工藤:女性医師でも専門医取りますって目標があるといいと思います。今は、人手が少ないから働かなきゃいけないって言う義務感で働いてると思うんです。臨床に削られて、自分がこれを専門にしたいなどの希望が出来ないような感じになっちゃって。負のスパイラルで、臨床もやって、家事もやって、てなると目標がないと辛くなってくると思うんですよ。確かに働くのは大変なこともあるけれど、楽しいこともいっぱいあって。たとえば、私はこれを極めたいとか、このことに関しては、新潟県内だったら私に聞いてくれればいいわとか。

佐々木:評価されるってことですよ。やることによる満足感。それは、家事をやってる時の満足感とは別物ですよね。

工藤:積極的に思ってやってる大変さと、時間だけが拘束されていく、やらされている大変さって違うと思うので、どんどん積極的に働ける環境というか。

高橋:結局みんな仕事が好きだから復帰してるんですものね。

神田:義務じゃなくて、仕事として楽しんでやりながら、社会の一員として、医師として働いていく。そういう人を暖かく育てる社会であるべきだというのは大いに発信していくべきだと思うんですよね。そういう環境作りが大切なのかなって思いますね。そのために何かしらの方法論が必要だとは思いますが。

影向:最近では「ホスピレート」という制度がありまして、「女性医師を含むすべての医療従事者が安心して働くことが出来る病院」を目標にかがげて認定を受けている病院が増えてきています。残念ながら西日本の病院に多いようですが、20箇所くらいあるそうですよ。新潟県からも第一例目がでてくれるといいPRになりますよね。

佐々木:そうね!女性医師だけじゃなく、医師全体、病院全体が変わることが大事ですよね!医療業界だけじゃないと思いますよ。これから働き手がどんどん減っていくなかで、全ての業界において、女性が働くのが当たり前で、働かなきゃどこも立ち行かなくなると思います。女性たちが頑張っているのにもったいないですよねぇ。

榎本:一つには、ご主人の理解をもっと高めるっていうのがすごく大事ね。とくにどっちも医師の場合は。

影向:あとご主人の上司!

榎本:そうそう、意識改革ね!

佐々木:色んな意見がでましたね。そろそろ終わりかしら?

神田:はい、佐々木先生ありがとうございます。今後もこのような会を続けられたらと思います。本日は誠にありがとうございました。

全員:ありがとうございました。

(所属等はトークセッション開催時現在です。)