先輩医師インタビュー 分野 外科、乳腺外科
2020年02月10日

同性として患者に寄り添う乳腺外科医でありたい

小千谷総合病院 外科医長山浦久美子 先生新潟県出身・平成18年 新潟大学医学部卒

外科医を目指した理由を教えてください。

単純な理由で恥ずかしいのですが、研修医時代に指導してくださった外科の先生の手術する姿がかっこよく見えたことがきっかけです。手術はチームで行うので、若くても経験できることがあり、オープンな雰囲気の中で学べる環境に惹かれました。また、手術によって治療の結果がすぐに出るところも魅力的でした。研修後は、新潟大学や県内の地域病院の一般外科で経験を積み、初めは消化器外科に進もうと思っていました。

専門は乳腺にされたのですよね。

乳腺を専門として選んだのは、外科の中で乳がん患者が増えてきたこと、乳がん治療が進歩して薬の種類も増え、専門として正面から取り組まなければならないと思ったこと、そして、患者さんの思いに同性として寄り添える女性医師が求められていると感じたからです。乳腺専門医を取得し、診断から手術、薬物療法、緩和ケアまでを担当しました。患者さんに向き合い、最初から最後までを一貫して診ることができる乳腺専門医は大きなやりがいを感じられる仕事です。また、「先生でよかった」と患者さんに言ってもらったり、感謝の言葉を聞いたりすることが増え、そういう時にもこの仕事を選んでよかったと実感しました。

治療は、手術とホルモン療法、抗がん剤、分子標的治療のハーセプチンなどを組み合わせて行いますが、何を選ぶか、どういう順番で行うか、一人一人に合わせて治療方針を立てます。最近は再発対応の薬も増えるなど、学ぶことが多いです。勉強会や研修に参加する以外にも、Webセミナーを受講することもできるので、地方にいても最新情報は十分に入手できます。

現在のお仕事について教えてください。

出産・育休を経て、外科医が3人体制で比較的勤務に余裕があり、私の実家からも近い小千谷総合病院で子どもが7カ月の時に仕事復帰をしました。今は、週に1回の乳腺外来と検診マンモグラフィの読影、消化器外科の手術助手、病棟回診などを担当しています。夜間と休日の拘束と当直は免除していただき、日直は月に1回行っています。新潟県内では、大学医局が中心となって医師の状況を踏まえて職場や働き方を調整し、上司や同僚も理解して配慮してくれるので本当に助かります。

女性医師の中でいつ子どもを持つか迷っているという声も聞きますし、自分自身も悩んだこともありましたが、いつが正解ということはありません。時期はそれぞれでいいと思います。自分が働けるときに働けばいい、助けられる立場になったら助ければいい、周囲も協力してくれますから大丈夫です。外科は患者さんの急変もあり緊急対応は必要ですが、自分で手術して治せるのは大きな魅力です。ただし、乳腺では緊急手術はないので、その点でも私は女性に向いていると思っています。

これからの目標についてお話しいただけますか。

乳がんは唯一、自分自身で見つけられるがんです。月に一度自分で触って、年齢によってはマンモグラフィを受け、早期発見・早期治療を叶えられるよう、広く教育や啓もうを行っていきたいです。早期なら切除部分も小さく、またリンパ節を切除しなくてもよいので、術後の回復もスムーズですから。また、これまでの経験や自分なりのノウハウを後輩に伝え、育成にも関わっていこうと思っています。

医師を目指す人へメッセージをお願いします。

面積の広い新潟県では、それぞれの地域に基幹病院があり、地域治療を担っています。そこでは、外科医は若い頃から様々な症例の手術を数多く手がけ、実力をつけることができます。また、長年にわたる医師不足を背景として、医師を大切にしてきた風土が地域に根付いており、患者さんは総じて穏やかで、信頼関係を築きやすい環境です。余計なことを気にせずに、診断・治療に力を注げる場所で、医師としてのキャリアを踏み出してはいかがでしょう。

(所属等は執筆時現在です。)