先輩医師インタビュー 分野 泌尿器科
2018年12月27日

内科と外科の両面性を持つ泌尿器科にやりがいを感じます

新潟県立中央病院安藤嵩 先生新潟県新潟市出身・平成18年 新潟大学医学部卒業

現在のお仕事について教えてください。

2017年4月から新潟県立中央病院泌尿器科に勤務しています。当科では排尿障害や悪性腫瘍、尿路結石症、尿路感染症など、泌尿器科疾患を幅広く診療しています。当院は上越市・妙高市・糸魚川市からなる上越地域での三次救急までを担う病院です。そのため、当科にも比較的重篤な患者さんや高齢な患者さんが集まる傾向にあり、上越地域の泌尿器科診療において緊急対応、手術対応を含めた難しい疾患への対応が求められる立場にあります。また、当科では泌尿器科に特色ある治療を幅広く行っています。

当科は主治医制ではなく、4人の医師全員で1グループとなり入院中の患者さんを診ています。そのため、土日の出勤や平日夜のオンコールは当番制です。他に病院の業務として救急救命センター・救急外来での日直・当直業務が概ね月に3回ほどあります

泌尿器科を選んだのはなぜですか。

目に見える形で人の役に立ちたいという気持ちから医師を目指し、学生時代には外科系に興味を持っていました。手術は患者さんに大きな変化をもたらす治療法です。そのダイナミックな変化を自分の手で起こしたいと思ったことがきっかけです。そういう単純な気持ちを持ちつつ医学生から臨床研修医へと進む過程で、泌尿器科は外科系であることはもちろん、病気を発見し、治療し、経過をみるという一連の流れにずっと関われる診療科であることを知り、惹きつけられ、おもしろさを感じました。

具体的にはどのようなことですか。

たとえば他の臓器の疾患では、発見するのは内科、手術が必要となったら外科、化学療法をするのは内科であったり外科であったり、というように、複数の科が連携しながら段階や経過に応じて一人の患者さんを診ていきますが、泌尿器科では、ある患者さんが不調を訴えて来院すると、まず問診や検査を行って原因を突き止め、診断します。そして、投薬という内科的な治療か、手術など外科的な治療かを選択しながら行いますが、泌尿器科医はその両方を自分たちで行えます。内科と外科の両面性を持って、患者さんの病気の最初から最後までを縦断的に、全体的に診ることができる。泌尿器科という領分の中で、一人の医師が一人の患者さんにずっと向き合っていくところにやりがいや大きな達成感を感じたのです。

さらに、泌尿器科が治療する腎癌では話題のオプジーボも含めた免疫治療も行いますが、新潟大学の泌尿器科では以前から免疫治療に積極的に取り組んでおり、新潟県内の医療機関はそのデータや研究を共有できるので、全国でも先端を行く治療が実践できます。ここは新潟県の泌尿器科医にとってもひとつの魅力です。

泌尿器科の疾患の傾向には、地域による違いはありますか。

日本においては病気の発症には地理や気候による違いはあまりありません。患者数の多い尿路結石症は生活習慣によることも多く、一般的な生活習慣病同様、食生活や運動に気を付けて健康的な生活を送ることが予防と言えます。また、特に膀胱がんでは喫煙が罹患リスクを上げるので禁煙が望ましいとされています。前立腺肥大や前立腺がんは、高齢になるにつれ発症率・罹患率が上がりますから、超高齢社会を迎えた今、これからも確実に患者が増えていくと予測されています。この上越地区は新潟県でも比較的高齢化が進んでいるので、そういう点では、泌尿器科医が必要とされ活躍できる場所と言えます。

医師を目指す人へメッセージをお願いします。

 

超高齢社会では医療を必要とする人が増え、同時に、先ほど触れた免疫治療も含め新しい治療方法が現れ、高齢者であっても治療の選択肢は広がっていくと考えられます。周囲からの医師への期待は高まり、医師自身にとってもやりがいは大きくなっていくでしょう。また、多くの選択肢の中から、自分たちで考え、判断し、提示し、実行し、結果(経過)をみる、そのすべてを自分たちで行える泌尿器科医のやりがいもきっと大きいものになると思っています。

一方、高齢者の治療では、既往症や併存疾患、体力や筋力などを踏まえて治療する難しさに加え、治療後のリハビリや生活への復帰、通院についての配慮、離れて暮らしている子ども世帯など家族とのコミュニケーションの難しさ、なども重要になってきます。ですから、病気だけでなく患者さんの暮らしも考えること、また地域医療に関わる者として、地域内の他医療機関や介護施設、他職種の方々と連携を持つことを心がけてほしいと思います。

(所属等は執筆時現在です。)